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「重耳」/宮城谷昌光を読んで

 この本は、宮城谷昌光氏が著した本の中では自分が始めて買った本です。この本を買ったのは1993年ですので、もう12年たったことになります。年月の流れは早いなあと読みつつ思いました。
 さて内容ですが春秋の五覇の一人となる文公(重耳)の生涯を記したものですが、祖父の武公(称)、献公(詭諸)を含む三代について記しています。称による晋の再統一と死、詭諸による三太子の忌避と放逐、重耳の19年の諸国放浪と晋の国主への道、そして中華の覇者への道といったものです。
 宮城谷昌光氏の小説の傾向として本題より周辺を詳述するといったところがあると思います。この本では特に、小国の君主としては大度な”称”、重耳について諸国を巡った重臣の狐偃・狐毛の父である”狐突”、詭諸の廃太子である”申生”が特に目立ちます。
 ”称”は人主としての在り方が良い人物です。次代息子の詭諸が人格的な低さを感じさせる人物であるために、特に目立ちます。また、重耳を見出した人物としても特筆すべきです。
 ”狐突”は、献公の太子である申生(共)の師であるにもかかわらず、息子二人をなぜ重耳につけたのかを記していたり(占いの結果を受けて)、二千の兵で四万の兵を退けるところが印象的です。
 ”申生”は師の狐突らによって、勤格で孝子な人物に育ちましたが、女兵である驪姫によって陥れられてからはその性格に固執することによって、返って父である詭諸を貶めることになったという指摘はなるほどと思いました。
 重耳が諸国放浪へと出てからの話は、知っている話が多かったですが、重耳が覇者になれたのは自らの欲望というより重臣たちに引っ張られた感がありますが、それよりも諸国を巡ったことによる人格の成長が大きいとの話は、考させられるものがあります。

 自分としては、国主となってからの事跡が城僕の戦いを中心に書いていてそなたの施政について書いていないのが残念に思います。ですが、後書きにかいてあるとうり長い間書こうとしてようやく書いた本だけにとてもよい作品だと改めて思いました。

 

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