侠骨記/宮城谷昌光
この本は三篇からなる短編集です。
「侠骨記」/魯の国の郷士階級でありながら、将軍の身分となった曹劌を描いた作品です。
自分が曹劌を知ったのは、史記列伝の内の刺客列伝が始めてでした。しかし、紹介された内容は少なく三度斉と戦って三度ともに破れたが盟約の場で匕首をもって、桓公を脅し領土を回復したというものです。ただし行間には、小国の悲哀と曹劌の心気の爽やかさが現れています。この作品では、魯の国の状況と登用の経緯君主の壮公と曹劌の君臣の結びつきが描かれており好きな短編の一つです。
「布衣の人」/中国古代の聖人の一人として必ず上げられる舜の話です。布衣とは、粗末な服を現している言葉で、衣食に驕らないといった意味です。布衣の人とは、確か舜のことを指す単語であったような記憶があります。話の内容としては、尭より帝位を禅譲された聖人の舜の話ですから、エピソードは面白みが有りません。ですがこの話を読むと、周りの人物こそが舜という聖人を生み出す一端となったのかと感じさせてくれた短編です。
「買われた宰相」/五羖大夫と呼ばれた秦の宰相、百里奚の物語です。左伝では百里奚は、汎舟の役の際に背信を繰り返してきた隣国晋が、自国の米の不作の為の救援を求めてきた際の発言が印象深い人物です。「天災のふりかかることは国々順番でございます。それで、天災を救いあい、隣国相哀れむのが道でございまして、道を行えば福が授かります」 といった徳政主義の発言です。左伝では、百里奚の年齢やどうやって登用されたのか、蹇叔との出会いは?といった隙間をうめてくれる短編で好きな話です。
書籍データ
単行本: 228 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 講談社 ; ISBN: 4062052008 ; (1991/02)
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